はじめに
「筋トレを始めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」――そう感じている社会人男性は少なくないと思います。仕事で疲れている、時間がない、ジムに通う余裕がない、続けられる自信がない。始める前から立ちはだかる壁は意外と多いものです。
今回は、運動経験のない社会人男性が最初の3ヶ月で無理なく続けられる筋トレメニューについて、厚生労働省の公的ガイドラインに基づきながらわかりやすく解説します。前提は週2回・自宅とジムを併用。1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目に分けて段階的にレベルアップしていく構成にしました。
厚生労働省が推奨する筋トレの頻度
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人および高齢者に対して週2〜3日の筋力トレーニング実施が推奨されています。
同ガイドの情報シートでは、筋力トレーニングは「マシンなどを使用するウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せなどの運動も含まれる」と定義されており、自宅での自重トレーニングも公的に推奨される運動形態に位置付けられています。
また、e-ヘルスネット(厚生労働省)「レジスタンス運動」によると「筋トレを実施している群は、実施していない群と比較して、総死亡及び心血管疾患、全がん、糖尿病、肺がんの発症リスクが10〜17%低い」と報告されています。健康増進効果は科学的データで裏付けられており、社会人にとっては将来の医療費削減にも直結する自己投資といえそうです。
3ヶ月メニューを設計する2つの原則
初心者がつまずかずに3ヶ月続けるためには、いきなりメニューに飛びつく前に、トレーニング設計の土台となる2つの原則を押さえておくことが大切です。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 漸進性過負荷 | 慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく |
| 個別性 | 個人の体力・回復度に合わせて調整する |
漸進性過負荷の原則
e-ヘルスネット「運動プログラム作成のための原理原則」によると、筋力トレーニングを行う際は「日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく」ことが重要とされています。これを「漸進性過負荷の原則」といいます。
初心者がいきなり高重量に挑戦すると怪我のリスクが高まります。そのため最初の1ヶ月は自重で正しいフォームを身につけ、2ヶ月目以降にダンベルやマシンを使った負荷を段階的に導入していく構成が、安全かつ効果的です。
個別性の原則
同じく厚生労働省の情報シートには「個人の特性や能力に合わせて実施する『個別性の原則』も大変重要」と明記されています。本記事のメニューはあくまで一般的な目安であり、自身の体力・回復度に合わせて回数や負荷を調整することが前提となります。
【1ヶ月目】自宅で自重トレーニング・週2回
1ヶ月目の目的
1ヶ月目の目標は「正しいフォームの習得」と「運動を生活に組み込む習慣化」の2つです。器具は不要で、自宅で完結します。
1ヶ月目のメニュー(週2回・各30分)
| 種目 | 回数 × セット | 休憩 | 主な部位 |
|---|---|---|---|
| スクワット | 10回 × 3セット | 60秒 | 下半身全般 |
| 腕立て伏せ(膝つきOK) | 10回 × 3セット | 60秒 | 胸・腕・体幹 |
| プランク | 30秒 × 3セット | 60秒 | 体幹 |
| ヒップリフト | 15回 × 3セット | 60秒 | お尻・体幹 |
1ヶ月目のポイント
- 月曜と木曜など、中2〜3日空けて実施します
- 反動を使わず、ゆっくり動作します(上げ2秒・下げ2秒が目安)
- 呼吸を止めません(持ち上げる時に息を吐く)
- 痛みが出たらすぐ中止し、フォームを見直しましょう
【2ヶ月目】ジム導入・分割法を取り入れる
2ヶ月目の目的
自重トレーニングに身体が慣れてきたら、ジムでのウエイトトレーニングを開始します。漸進性過負荷の原則に従い、自重では物足りなくなった負荷を、ダンベルやマシンで安全に追加していく段階です。
ジム選びの基準
初心者にとってジム選びの最大のポイントは「通いやすさ」と「料金」です。最近は24時間営業の中価格帯ジム(エニタイムフィットネス、ジョイフィット24等)から、月額3,000円台で全国展開する無人ジム(chocoZAP等)まで選択肢が広がっています。仕事帰りに無理なく寄れる立地、月額料金、必要な設備(フリーウエイトの有無等)の3点で絞り込むとよいでしょう。
多くのジムでは無料体験や見学ができますので、契約前に2〜3店舗を実際に訪れて雰囲気を確認することをおすすめします。
2ヶ月目のメニュー(週2回・各45分)
胸・背中の日と、脚・肩の日に分割する「2分割法」を採用します。同じ部位を連日鍛えるより、回復時間を確保しやすく筋肥大に有利とされる方法です。
A日:胸・背中・腕
| 種目 | 回数 × セット |
|---|---|
| ベンチプレス(マシン or ダンベル) | 10回 × 3セット |
| ラットプルダウン | 10回 × 3セット |
| ダンベルカール | 10回 × 3セット |
| トライセプスプッシュダウン | 10回 × 3セット |
B日:脚・肩・体幹
| 種目 | 回数 × セット |
|---|---|
| レッグプレス | 10回 × 3セット |
| ショルダープレス | 10回 × 3セット |
| サイドレイズ | 12回 × 3セット |
| アブドミナル(腹筋マシン) | 15回 × 3セット |
2ヶ月目のポイント
- 10回ギリギリ持ち上げられる重量に設定します(軽すぎると効果が出にくいです)
- 2週間ごとに重量を5〜10%程度ずつ増やします(漸進性過負荷の原則)
- 初日はジムスタッフやトレーナーに正しいフォームを確認してもらうと安全です
- セット間の休憩は60〜90秒を目安にします
【3ヶ月目】習慣化と次のステップ
3ヶ月目の目的
3ヶ月目は、2ヶ月目のメニューを継続しながら負荷を高め、種目を増やす段階です。同時に「やめずに続ける仕組み」を完成させる時期でもあります。
3ヶ月目のメニュー追加例
- A日:ダンベルフライ、シーテッドローイングを追加
- B日:バーベルスクワット、レッグカールを追加
- 各種目を10回×3〜4セット、重量は2ヶ月目より1段階上げる
記録をつける
使用重量・回数・セット数をスマホアプリやノートに記録すると、漸進性過負荷の管理が楽になります。「先週より1kg重い」「先週より1回多い」を可視化することで、継続のモチベーションにつながります。フィットネス系の記録アプリは無料で多数公開されていますので、好みのものを選んで導入してみてください。
食事:タンパク質の摂り方
1日の推奨量
筋トレの効果を最大化するには、適切なタンパク質摂取が欠かせません。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると18〜64歳男性のタンパク質推奨量は1日65gとされています。これは体重1kgあたり約1g前後に相当します。
e-ヘルスネット「たんぱく質」では、たんぱく質は「筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体構成成分、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能成分」として位置付けられている重要な栄養素であると説明されています。筋トレ習慣のある人は一般成人より多めに摂取することが各種研究で推奨されていますが、まずは公的な推奨量を満たすことを目標にしたいところです。
1日65gを満たす食材例
| タイミング | 食材 | タンパク質量 |
|---|---|---|
| 朝 | 卵2個 + 納豆1パック | 約20g |
| 昼 | 鶏むね肉100g | 約23g |
| 夜 | サバ1切れ | 約20g |
| 合計 | 3食合計 | 約63g |
プロテインの活用
食事だけで毎日タンパク質を確保するのが難しい場合は、プロテインの活用が選択肢になります。1杯あたり約20gのタンパク質を10秒ほどで摂取できる手軽さから、忙しい社会人の補助食品として広く普及しています。種類はホエイ・カゼイン・ソイの3つが主流で、目的やタイミングによって使い分けるとよいでしょう。
初心者がつまずきやすい4つの落とし穴
3ヶ月メニューを着実に消化するためには、ありがちな失敗パターンをあらかじめ知っておくことも大切です。
①最初から負荷を上げすぎる
「早く結果を出したい」と最初からハードな重量に挑むと、フォームが崩れて怪我につながります。1ヶ月目は自重で十分です。フォーム習得を最優先にしてください。
②休息日を取らない
厚生労働省の情報シートでは「筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう」と明記されています。同じ部位を連日トレーニングすると、回復が間に合わず効果が落ちてしまいます。最低でも48時間は同部位の休息を取りたいところです。
③タンパク質不足
1日65gを下回る食生活では、いくらトレーニングをしても筋肉合成が追いつきません。食事の質を見直すか、プロテインなどで意識的にタンパク質源を増やす必要があります。
④短期間での効果を期待しすぎる
体組成の変化は最低でも3ヶ月以上を見込むべきとされています。1〜2週間で見た目が変わらなくても、神経系・筋繊維レベルでは確実に変化が起きていますので、継続が最大の味方になります。
続けるための3つのコツ
①スケジュールに固定する
「時間が空いたらやる」では永遠にやらないままです。火・金の19時、土曜の午前など、カレンダーに固定スロットを確保することで習慣化されます。仕事の予定と同じ優先度でブロックするのがコツです。
②ハードルを下げる
仕事で疲れた日は「今日はスクワット10回だけ」でもOKです。0回より圧倒的に良いですし、完璧主義を捨てて「最低限の継続」を死守する方が長期的なリターンは大きくなります。
③小さな成果を可視化する
体重、ウエスト、ベンチプレスの重量など、数値を毎週記録します。グラフ化することで「進んでいる感覚」が継続のエンジンになります。スマートウォッチや体組成計を導入すると測定が習慣化しやすくなります。
まとめ
本記事では、運動経験のない社会人男性が筋トレを始めるための3ヶ月メニューを、厚生労働省の推奨内容に基づいて解説しました。要点をまとめるとこうなります。
- 1ヶ月目は自宅で自重・週2回・フォーム習得に集中する
- 2ヶ月目はジムを導入し、2分割法・週2回で部位別に鍛える
- 3ヶ月目は負荷と種目を追加し、継続の仕組み化を完成させる
- 厚労省も推奨する「週2〜3回の筋トレ」は複数疾患のリスクを下げる
- タンパク質は1日65gを目安に、食事+プロテインで確保する
- 漸進性過負荷の原則を守り、自分のペースで段階的に積み上げる
3ヶ月続けば習慣として根付き、その後は一生使える健康資産になります。今日のスクワット10回が、未来の自分への一番確かな投資です。無理せず、しかし着実に続けていきましょう。
参考サイト
公的ガイドライン
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001204942.pdf - e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』情報シート:筋力トレーニングについて」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-005.html - e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』推奨シート:成人版」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html
運動・栄養の用語解説
- e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「レジスタンス運動」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/exercise/ys-058.html - e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「たんぱく質」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-044.html - e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「運動プログラム作成のための原理原則」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-04-001.html
